THE HISTORY

黎明期

ビジョン

1976年、時計業界が危機に陥るなかで、レイモンド・ウェイルの歴史が始まりました。創業者レイモンド・ウェイルは、自らの会社を設立し、伝統的なスイス時計製造の技術を投影したタイムピースを生み出すことで、時計業界に新しい風を吹き込もうとしたのです。レイモンド・ウェイルの作品は、たちまち時計愛好家たちからの称賛を受けるようになりました。

スイスで確固たる地位を築くと、情熱と経験に支えられながら、ヨーロッパ、そして世界中にネットワークを拡大していきました。今日では、スイス時計産業を代表する最高峰の時計ブランドとして知られています。

アイデンティティの形成

ブランドが急速に発展したのちも、販路を拡大し、競争力をつける必要がありました。そのために、レイモンド・ウェイルの義理の息子であるオリヴィエ・ベルンハイムを会社に登用しました。以後、ファミリービジネスとして強力な経営基盤を築いていくことになります。オリヴィエは、マーケティング・コミュニケーション部門の責任者として、組織の近代化や、未知の市場の開拓に努めました。彼の加入によって、創業者が大切にしていた「家族経営による独立系企業」というブランドのあり方が、より強固なものになりました。オリヴィエは、1996年に社長兼CEOに就任することになります。

1983年に、オーストリアの作曲家モーツァルトの名を冠した『アマデウス』コレクションを、ミロス・フォアマン監督の同名映画と連動して発表しました。それをきっかけに、ベートーヴェン唯一のオペラにちなんだ『フィデリオ』、『トラヴィアータ』、『サクソ』など、音楽にインスピレーションを受けたコレクションが次々と誕生し、音楽との結びつきを大切にするブランドのアイデンティティーが確立しました。そして、『トッカータ』やウィメンズコレクション『ファンタジア』、創立10周年を記念して1986年に製作された、前衛的な技術と洗練されたデザインが融合した超薄型『オセロ』などの、カルト的なコレクションの登場によって、ブランドの個性が磨かれていきました。

ノウハウと専門性

新しい歩み

1990年代初頭に、複雑機構・高級素材・精巧な仕上げ・革新的なデザインを融合した『パルシファル』コレクションを発表し、スイス高級時計産業における新たな一歩を踏み出しました。完璧なプロポーションでデザインされたラウンド・レクタンギュラー型ケースによって、機能性と審美性を調和した『タンゴ』は、たちまち世界的に好評を得ました。クラシックで洗練されたスタイルで、時計製造の伝統を最も鮮明に体現したもうひとつの代表的コレクション『トラディション』も、同時期に生まれました。

広告活動では、様々なコミュニケーション活動を通じてアートへの関わりを着実に深めました。1994年には、宙を舞うダンサーをビジュアルに用いた「プレシジョン・ムーブメント」の広告キャンペーンが賞を受賞し、ブランドのアイデンティティーをさらに強めました。

イノベーションとテクノロジー

1999年、時計製造のプロセスをより改良・効率化するために、最新の技術を取り入れる必要がありました。そこで、研究開発部門が設立され、トゥータイムゾーンやレディースコレクション『シャイン』の特許取得機構・交換可能ブレスレットシステムなど、レイモンド・ウェイル独自のイノベーションの創造に注力しました。数年後には、機械式メンズコレクション『ドン・ジョバンニ コスィ グランデ』を発表し、時計製造のノウハウや技術的精度の高さをアピールしました。

独立した基盤

ファミリービジネスの確立

2006年、ブランド設立30周年を機に、レイモンド・ウェイルの3代目であるエリー・ベルンハイムとピエール・ベルンハイムが会社に加わったことで、長期的なファミリービジネスの地盤が固まりました。彼らは、独自のビジョンとノウハウによって、現代的かつ技術的に進化したコレクションの開発に注力し、大きな成功を収めました。

『ナブッコ』は、壮大な46mm径ケースに200m防水を備え、高品質のカーボンファイバー素材を採用した、ブランド初のハイテクコレクションです。500本限定生産の『ナブッコ クオーレ カルド』には、パワーリザーブインジケーター付きのスプリットセコンドクロノグラフが、ブランドで初めて搭載されました。メンズ・ウィメンズコレクション『フリーランサー』は、テンプの動きが見える時計の誕生、そして機械式のウィメンズ時計の誕生という、ブランドの歴史における2つの革新をもたらしました。2009年には、ウィメンズ独自のコレクションを発表しました。柔らかな曲線美と希少な素材が特徴の『ノエミア』は、世界中の女性を魅了し続けています。

機能性の追求とパートナーシップの強化

さらなる時計製造のノウハウと技術を用いて、ブランド初の自動巻きムーンフェイズ機構や、日付、曜日、月、週番号の表示機能を搭載した、革新的な『マエストロ』を生み出しました。調整が簡単にできる最新のプッシュボタンをケースに取り付けることで、複雑な機構の時計でありながらも、快適な操作性を実現しました。

同時期には、音楽業界で最も華やかかつ認知度の高い祭典のひとつであり、2008年からオフィシャルパートナーとして参加しているブリット・アワードなど、主要な音楽イベントとの強力なパートナーシップを構築し、音楽業界との関わりを強化していきました。

“Precision is my Inspiration”

キャッチフレーズの誕生

創業35周年を記念して、ウィメンズコレクション『ジャスミン』を発表し、成功を収めました。2011年には、「プレシジョン・イズ・マイ・インスピレーション」(Precision is my Inspiration)というキャッチフレーズを発表しました。また、ジュネーブ・ヴィクトリアコンサートホールの豪華絢爛な雰囲気のなかでモデルが時計を披露する、新しい広告キャンペーンを実施しました。
1年後には、インスピレーションの源である音楽だけではなく、アートにも着目した新しいキャンペーンを開催。宙に舞う楽譜に囲まれる構図で撮影した、美しくアーティスティックな商品画像が、高級時計業界で独自の地位を占めるレイモンド・ウェイルのブランドイメージを豊かに表現しました。

音楽を愛する時計メーカー

2013年は音楽とのパートナーシップやイベントが盛んな年であり、ブランドにとって音楽はますます重要なものとなっていました。世界最大の時計・宝飾品見本市であるバーゼルワールドでは、高さ9mの巨大な無垢材をチェコの形にデザインした、特別なスタンドをブースに設置し、音楽への愛を堂々と表現しました。ロイヤル・アルバート・ホールのようなアイコニックな音楽ホールや、アメリカのテレビ番組“Live From the Artists Den”、VH1 Save The Music FoundationやNordoff and Robbinsなどの慈善団体や、ブリット・アワードのような華やかなイベントとの協力関係を強めました。

そして、フランク・シナトラ、ニコラ・ベネデッティ、ギブソン、ゼンハイザーなど、ユニークなアーティストや音楽ブランドを称えるミュージックアイコンシリーズのキャンペーンを開始しました。また、創業40周年を記念して、『マエストロ』のザ・ビートルズ限定モデル、バディ・ホリー限定モデル、デヴィッド・ボウイ限定モデルなどを発表しました。ブランド初のトゥールビヨンや、フランスのシューズメゾン・レペットとコラボした『シャイン』の特許取得機構・交換可能ブレスレットシステム、ブランド初の自社製ムーブメント・RW1212などの開発は、レイモンド・ウェイルの創造性と革新性を象徴しています。

今後は、これまで以上に「精密なムーブメント」というモットーに真摯に向き合い、音楽的インスピレーションと技術力が融合した時計製造に力を注ぎます。

ブランドを支えてきた人物たち

ジュネーブを拠点とするレイモンド・ウェイルは、スイス時計業界でも数少ない、ファミリービジネスを一貫して継続している独立系ブランドです。1976年にレイモンド・ウェイル(エリー・ベルンハイムの祖父)によって設立されたこの会社は、後を継いだオリヴィエ・ベルンハイム(エリーの父)が社長を務めた18年間で、大きな成長を遂げました。

現在は、エリーのリーダーシップの下、スイス時計業界のリーディングカンパニーとしての地位を確立しています。創業から培ってきた経験や時計製造のノウハウ、創造性、そして何よりも独立性を3代に渡って継承し、安定したファミリービジネスを実現しています。レイモンド・ウェイルは、創業時のDNAを宿しながら、新たな発明と改革を続けてきたのです。

エリー・ベルンハイムCEO

エリー・ベルンハイムは、名門ローザンヌホテルスクールを卒業後、2006年に入社しました。レイモンド・ウェイルの孫にあたるエリーは、家族経営の3代目として、時計製造のノウハウとブランドのDNAを継承しており、2014年4月にCEOに任命されました。時計製造、マーケティング、ビジネスマネジメントに精通しており、近年はグローバル戦略の発展と強化に努めています。ブランドに根付く伝統的な価値観と、若く新鮮なビジョンを併せ持つエリーは、企業イメージやコミュニケーション、ソーシャルネットワークの管理に長けたリーダーであり、様々なアプローチで顧客との距離を縮めることに成功しています。旺盛な好奇心と情熱で、市場への知見を深め、ブランドパートナーとの良好な関係を築いています。

プロのピアニストである母を持ち、エリー自身もピアノやチェロを弾きこなすなど、音楽への深い造詣を持っています。音楽への情熱は、開発やマーケティングに大きな影響を与える、ブランドにとって重要なインスピレーションの源となっています。

オリヴィエ・ベルンハイム社長

ブランド設立から数年後、義父である創業者レイモンド・ウェイルの要請により、1982年にオリヴィエ・ベルンハイムが入社しました。社長兼CEOのオリヴィエは、行動力と先見性を兼ね備え、ビジネスパートナーと長期的な信頼関係を築きました。ブランドのアイデンティティーであるファミリービジネスを維持しながら、世界中で持続可能な成長を実現しました。オリヴィエのブランド戦略は、時計業界に大きなインパクトをもたらしました。世界各地で販路を拡大し、綿密なコミュニケーション戦略を実行しました。また、高品質の機械式時計を次々と発売することで商品ラインナップをアップデートし続けた一方で、手に取りやすいエントリーレベルのコレクションの開発にも着手しました。

今後の目標は、ブランドの独立性を保ちながら、ヨーロッパ、アジア、北米などの成熟した市場でブランドの認知度を高めていき、中国、インド、ロシアなど大きな可能性を秘めた重要な市場では、ショップ・イン・ショップや高級ブティックを通じてブランドの存在感を高めることです。

ビジネス同様、私生活でも音楽との深い関わりを大切にしています。家族全員でオペラを聴き、音楽への愛を共有しながら夢を語り合います。家族と過ごし、自然を楽しむことが、オリヴィエにとって最大の贅沢です。